『高次脳機能障害について』~重度者の実態~
すでにご案内の通り、先日、脳損傷・高次脳機能障害サークルエコー(家族会)で、毎月恒例の、zoomを使った「web集いの場」を開催しました。
そこでのある会員のひとこと。
「日本の医療技術は日に日に進歩している。それによって多くの命が救われていることはとても喜ばしい。が、その一方で重い後遺症に悩む方も増えていく。この実態をわれわれは冷静に考えなければならない」
まさにその通り! 重度の高次脳機能障害を抱える方の多いうちの家族会(サークルエコー)にとって、とても重要な考え方であると思います。
また、世の中には同じ悩みを抱えておられる方がたくさんおられます。ぜひ、ともに考え、重度の障害についての理解を世の中に広く求めて行きたいと思います。
それでは、そもそも「重度(者)」とは?
この定義は正直、なかなか難しいと思います。が、あえて仮説をあげさせていただきます。
総務省消防庁『令和元年版 救急・救命の現状』をもとに考えます。
平成30年中に、一般市民が目撃した心原性心肺機能停止の傷病者数は「25,756人」とのこと。
うち1カ月後の生存者は「3,584名」。
そして、さらにそのうち「1カ月後社会復帰者数は2,355名」。
*「社会復帰者」とは「脳機能、全身機能ともに中等度障害から機能良好の方」をさします。
そう考えると、やや乱暴ではありますが、
1カ月後生存者-1カ月後社会復帰者=1カ月後の段階における重度後遺症者 と推計されます。
上記調査結果をもとに計算すると、(3,584-2,355)÷25,756=0.048
つまり、その状況にもよると思いますが、心肺機能停止傷病者の約5%が重度の後遺症を抱えると思われます。
この数字が多いのか少ないのかという議論は別にして、心肺機能停止傷病者の「5%」の方に重い後遺症が残る可能性があるということをご理解いただきたいと思います。
この仮説が、すべて高次脳機能障害につながるかどうかは、専門家の方を含めいろいろご意見のあるところと思います。
が、何より、不幸にして脳に重い障害を患ってしまったことで、想定された残りの人生のストーリーが大きく狂ってしまった当事者ならびに家族の思いをご理解いただくとともに、高次脳機能障害(特に就労まで行きつかない重度者の問題を基本に)を一人でも多くの方と共有させていただきたく、web講座という形でこの障害について発信していきたいと思います。
よろしくお願いいたします。