橋本圭司先生(はしもとクリニック経堂 院長)の講演より

昨日、「高次脳機能障害 家族会さやま」で『高次脳機能障害との上手な付き合い方』と題しまして、はしもとクリニック経堂 院長の橋本圭司先生のセミナーがありました。

いろいろな示唆に富んだお話をいただきました。

お話の内容は下記に示しましたが、何より家族や支援者が高次脳機能障害を正しく理解し対応するとともに、特に家族が主体となり当事者をサポートすることの大切さを強く感じました。

<講演の主な内容>

〇高次脳機能障害の診断は、症状・画像(MRI)・心理検査から医師が認定する。

〇リハビリは、New York大学Rusk研究所の神経心理ピラミッドの最下層にある「神経疲労」の対応からスタートするべき。

 *神経疲労→頭(脳)に酸素が行っていない状態

〇Rusk研究所で実施していた高次脳機能障害患者に対するリハビリのプログラムは、患者をコンシューマーとして見るものであり、家族のためのリハビリでもある。

〇易疲労性への対応

・姿勢を正して ・深呼吸 ・ストレッチ ・緑の中で運動(30分の有酸素運動)

〇イライラへの対応

・ポジティブ・フィードバック ・1秒待ち訓練 ・行動変容法(嫌がることをしない)

〇やる気のなさ(発動性の低下)への対応

・抑揚をつけて7秒以内のキーワードで話す

・(選択肢を与えて)自分で決めさせる

・ネガティブ・オーラを出さない→当事者は「人間観察力」が鋭いため、表情・口調に注意

〇注意・集中力低下への対応

・姿勢をただす ・環境刺激(余計な刺激を減らす) ・せかさない

〇言語障害・失語症への対応

・助け舟を出す ・非言語コミュニケーション ・リラックスした環境  ・タッチケア

〇記憶障害の対応

・丸暗記よりストーリーを理解(暗記記憶より経験記憶)・オウム返しに復唱させる

〇遂行機能障害への対応

・曖昧な指示は避け、指示は具体的に。指示は一つ一つ。リストにして書き出す

・いつ、どこで、何を、どのように、結果どうなるのかについて書き出す。

 なるべく予定は変更しない。

・時間にゆとりを持つ。せかさない。

〇病識の欠如への対応

・うまくやっている当事者の姿をみせる。患者は他者モニタリングのプロ。

・ダメなことを怒らない

・今確実に自分にできることを認識する。

・「できない」ではなく「できる」を伸ばす

〇「良い療育者」とは(上手な療育者)

 ・短くシンプルに指示する

 ・肯定的である

 ・人のせいにしない

 ・「できること」を伸ばそうとする→できることを認める

  (「褒める」ではなく「認める」ことが重要)

最後に、特に印象的だった先生のコメントをご案内します。

①リハビリについての考え方 : 

  × リハのためのリハ

  〇 しっかりと目的を伝える。〇〇すると楽しいと思わせる居場所づくり

②質疑応答より:

Q 高次脳機能障害になって2年たつがなかなか治らない

A 「元通りに戻る」ことを期待していてはならない。「治そう」  

 と、家族ががんばるのは本人は辛くなる。失われた機能

 を、残った機能で代償させることが重要。 

ご家族には辛いことも多々あるとは思いますが、当事者・家族にとってのQOL(生活の質)いかに高めていくかを客観的に考えることが必要と思います。